

ノロウイルス食中毒・感染性胃腸炎について
2017年8月1日
ノロウイルスによる集団感染
2017年8月4日~13日の10日間の日程でイギリスのロンドンでは、世界陸上競技選手権大会が開催されており、連日テレビで中継されていますが、この大会中に、各国の選手団が宿泊している公式ホテルの一つで、胃腸炎などの体調不良者が続出し、症状を訴えている人々は、約50名にものぼり、そのうち数名からノロウイルスが確認されているという報告がありました。
ノロウイルスについて
ノロウイルスとは、遺伝子として一本鎖RNAを持ち、エンベローブを有さないRNAウイルスであり、このノロウイルスを起因とする食中毒や感染性胃腸炎は、一年を通して発生し、特に冬季(10月~3月)に多発しています。
尚、ノロウイルスは人の手指や食品を介して経口で感染し、ヒトの腸内で増殖します。症状としては、おう吐、下痢、腹痛などを引き起こし、健康な人であれば、2~3日で快方に向かいますが、子供や高齢者などでは重篤化したり、吐物を気道に詰まらせて死亡する事もあります。又、ノロウイルスはワクチンがなく、治療方法も輸血などの対症療法に限られているのが実情です。
① 感染力が非常に強く、10個~100個程度で感染・発症します。
② 主に冬季(10月から5月)に流行します。
③ 感染者のおう吐物や糞便中に多く存在し、飛沫、塵埃感染も引き起こします。
④ ヒトの腸管内でのみ増殖し、食品中や環境中では増殖しません。
(但し、乾燥状態でも数週間は生存していると考えられています。)
⑤ 有効なワクチン等の治療法がありません。
ノロウイルスは感染後、凡そ1~2日の潜伏期の後に発症し、2~3日で回復に向かいますが、小児では3週間以上、成人では2~3週間に渡り、糞便にはこのノロウイルスが潜伏したままの状態で排出されます。
尚、摂取してから、15時間後には発症前であっても感染した人の糞便に含まれているノロウイルスが排出され始め、摂取後1~3日後にこの排出のピークが見られると言われています。しかも、無症候性保菌者も多く、十分な注意が必要です。
食中毒と感染性胃腸炎の違い
ノロウイルスによる「食中毒」と「感染性胃腸炎」の違いは、どちらもノロウイルスに感染した事を意味していますが、関係する法律の定義の違いによって分類されています。
尚、その取り扱いについては、ウイルスに汚染された食品を摂取する場合には「食中毒」、それ以外の原因で発症したものは「感染性胃腸炎」として扱われます。
(食中毒)
・牡蠣等の2枚貝を、生又は不十分な加熱調理で喫食した場合
・感染した人が不十分な手洗いで調理して食品を汚染し、それを喫食した場合
(感染症)
・感染した人の糞便やおう吐物に触れた手指を介して口に入った場合
・乾燥した糞便やおう吐物から空中に浮遊したウイルスを吸い込んだ場合
まとめ
ノロウイルスを起因とする食中毒や感染症は、毎年、拡大傾向にあり、その対策として、厚生労働省におきましても、平成28年度には、国立医薬品食品衛生研究所において作成された「ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書(平成27年度)」を参考資料として、「大量調理施設衛生管理マニュアル」を改定し、この際、調理機械、調理台、調理器具類などは、ノロウイルスに対する不活化効果を期待することが出来る薬剤を選定し使用することや、十分な洗浄が困難な器具類については、有機物存在下でも不活化効果を期待することが出来る、亜塩素酸水又は次亜塩素酸ナトリウム等で浸漬処理し、消毒すること。と明確に記されており、つい先月も、このノロウイルス対策に係る項目が新たに追加・変更され、食品に携わる施設や調理従業者に対する衛生管理の強化と、その徹底が指導されています。
尚、2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会も控えており、今回、イギリスで開催された世界陸上競技大会で発生したノロウイルスによる集団感染のような事態を引き起こさない為にも、更なる強化が図られるであろうと予測されます。
そしてまた今年度も、このノロウイルスの流行シーズンが近づいてきています。貴施設の日頃の衛生管理方法や、緊急時の対応方法を、今一度見直され、ノロウイルスを起因とした食中毒や感染症を発生させない管理体制を、これまで以上に、強化された方が良いのではないでしょうか?