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<b>イソチオシアネート基と塩素酸化物の発色反応について</b>
<b>イソチオシアネート基と塩素酸化物の発色反応について</b>

イソチオシアネート基と塩素酸化物の発色反応について

2025年8月26日

野菜中に含まれるイソチオシアネート基

キャベツの芯や大根の先端には、辛味成分でありますイソチオシアネート基(-N=C=S))と言う有機硫黄化合物が含まれており、このイソチオシアネート基は、ワサビのツンとした辛味成分としては有名ですが、白菜等のアブラナ科全般、大根、ブロッコリーにも含まれており、また非常に鋭敏な化学反応性を有している事をご存じでしょうか?
そして、これらのイソチオシアネート基を有する野菜類を濃い濃度の塩素酸化物で処理してしまいますと、まれに変色する事が知られています。
しかし、本当にこのイソチオシアネート基を始めとする有機硫黄化合物が変色の原因に繋がっているのでしょうか?にも関わらず、この事を、はっきりと言及している文献は存在していない様です。
そこで、本レポートでは、キャベツや大根を塩素酸化物で殺菌処理した後に、変色が生じる条件(反応基)を確認すると共に、塩素酸化物との反応性について検証し、殺菌処理時の変色の有無と、その後の経時変化について、ご報告させていただく事にします。

変色原因は・・・?

前述のとおり、キャベツや大根には、有機硫黄化合物の一種でありますイソチオシアネート基(-N=C=S)が含まれており、詳細に述べますと、各野菜に存在しているイソチオシアネート基の化合物は、その構造こそ異なりますが、いずれも辛味成分を有しています。
一方、同じく辛味成分を持つ白色野菜である玉ねぎには、ジプロピルジスルフィド基(S-S)と言う有機硫黄化合物が含まれており、辛味を呈する有機硫黄化合物はイソチオシアネート基に限らず、複数存在しています。<図1>

そこで、これら野菜中に含まれている有機硫黄化合物全般が塩素酸化物による殺菌処理を施すことで、本当に変色するのかどうか?また、その場合、イソチオシアネート基全般が変色するのか?あるいは一部のイソチオシアネート基だけが変色するのかを確認しようと考え、試験してみる事にしました。<表1>

野菜の変色はイソチオシアネート基の有無によって発生する!?

キャベツの芯をすりおろした検体に対して、[クロリオ・5]の希釈液を滴下してみました所、1分後には、滴下部分を中心にピンク色に変化し、滴下液が全体に染み渡りますと黄ばみも見られるようになりました。
この事から、キャベツ中のベンゼルイソチオシアネート或いは、フェネチルイソチオシアネートと塩素酸化物は変色反応を呈し、その色調はピンク色であり、滴下濃度に応じて、その色調はより濃くなると言う事が判りました。
次に、大根の先端部分をすりおろした検体に、[クロリオ・5]の希釈液を滴下してみますと直後にくすんだ緑色に変化し、60分後にはベージュ色に変化してしまいました。そこで、この現象について推察しますと、大根中の4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートと言うイソチオシアネート基が塩素酸化物の酸化力によって変色するのだと考えられ、この場合、最終的にはベージュ色に変化すると言う事が判りました。
最後に、玉ねぎについては、[クロリオ・5]の希釈液を滴下しても変色する事は無く、無処理区と同等の色調のままでありました。よって、玉ねぎ中のジプロピルジスルフィドは、塩素酸化物による殺菌処理だけでは変色しないと言う事が判りました。
以上の事から、ワサビの辛味成分の代表であり、鋭敏な化学反応性を有する有機硫黄化合物の一つでありますイソチオシアネート基は、塩素酸化物による殺菌処理によって酸化され、変色するという事が判り、そして、それぞれの化合物の構造により様々な色調が生じるという事も判りました。
なお、鋭敏な化学反応性を有するイソチオシアネート基ですから、当然、塩素酸化物の濃度によってその変色は増大する事が想定でき、より殺菌効果を求めて濃度を引き上げて処理してしまいますと、この変色現象は必ず発生すると言う事になります。
それでは、例えば、キャベツの場合、どの程度の濃度までなら使用可能なのかを検証してみる事にしました。<表2>

キャベツの殺菌処理時に変色させない[クロリオ・5]の添加濃度は?

まとめ

原料のキャベツをスライサーで極細にカットする事で、芯部分に含まれているイソチオシアネート基を破砕し、塩素酸化物と反応しやすい形状に加工した上で、処理してみました。
その結果、亜塩素酸水製剤[クロリオ・5]で言えば、2.0%液から変色現象が確認され、やはりイソチオシアネート基の変色は塩素酸化物の濃度と明らかな比例関係にあると言う事が判りました。
なお、浸漬時間については、5分間と15分間で比較してみましたが、変色の度合いにその差は認められませんでした。ただし、[クロリオ・5]1.5%液の場合、5分浸漬までであれば、色調面の変化は少なく、また、菌数面に関しましても、良好な状態で維持出来ていました。
従いまして、イソチオシアネート基を含む野菜類を塩素酸化物で殺菌処理する場合、変色の発生を考慮しながら、濃度を調整する必要があると言う事が今回の試験で良く判りました。